睡眠時無呼吸症候群
数ある病院・クリニックの中から、当院のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。
院長の小野亘です。私は日本高血圧学会専門医でもあり、高血圧と深く関わる睡眠時無呼吸症候群についても日頃から多くの患者さんとお話ししています。
今回は、睡眠時無呼吸症候群について、少し詳しくお話ししたいと思います。
「最近、日中に強い眠気がある」「家族から『いびきがひどい』『息が止まっている』と指摘された」「朝起きると頭が痛い」「夜中に何度もトイレに起きる」「疲れが取れない」——こんなことでお悩みの方は、実はとても多いです。
この病気は、眠っている間に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりするものです。
多くの場合は、のどや舌が落ち込んで気道が狭くなったり塞がったりする「閉塞性」のタイプです。肥満や加齢、あごの骨格、男性であることなどが関係しやすいとされています。女性も閉経後に増えやすくなります。
一方、心不全や心房細動がある方では、脳からの「息をしなさい」という指令が一時的にうまく出なくなる「中枢性」のタイプもみられます。実際には閉塞性と中枢性が混ざっている方もいらっしゃいます。
当院は腎臓内科・透析を専門としていますが、高血圧や糖尿病、心不全、心房細動などと深く関わる病気でもあります。特に高血圧専門医として診療する中で、治療抵抗性の高血圧の背景に睡眠時無呼吸が隠れているケースを数多く経験しています。
どのような症状が出やすいか
夜間に多い症状は、大きないびき、家族から指摘される呼吸の停止、息が苦しくて目が覚める、あえぎ呼吸、夜間の頻尿などです。
日中では、強い眠気や居眠り(会議中や運転中など)、疲れが取れない、集中しにくい、朝の頭痛や口の渇き、イライラしやすいといった症状がみられます。
ご自身では気づいていないことも非常に多いのがこの病気の特徴です。
「自分はいびきをかかない」と思っていても、実は家族が困っているケースが少なくありません。まずはご家族に「最近、いびきはどう? 息が止まっているように見えることはない?」と聞いてみることをおすすめします。
また、高血圧の治療を受けていてもなかなか血圧が下がらない方、糖尿病のコントロールが思うようにいかない方、心房細動や心不全の既往がある方は、特に注意が必要です。これらの病気と睡眠時無呼吸は互いに影響し合いやすい関係にあります。高血圧専門医として診ていると、「薬を増やしても血圧が下がらない」という方の中に、睡眠時無呼吸が隠れていることが少なくありません。
なぜ早めの検査と治療が大切か
無呼吸が続くと、睡眠中に酸素が足りなくなり、体に大きな負担がかかります。
呼吸が止まるたびに交感神経が緊張し、血圧が上がり、心臓に負担がかかります。また、睡眠が細かく分断されるため、日中の眠気や集中力の低下につながります。
その結果として、
- 血圧が上がりやすくなる(特に治療が効きにくい高血圧)
- 不整脈や心房細動が出やすくなる
- 心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる
- 糖尿病のコントロールが悪くなる
- 心不全が悪化する
- 日中の眠気による交通事故や仕事上のミスが増える
- 集中力や判断力の低下で日常生活や仕事に支障が出る
といったことが起こりやすくなります。
特に中等症以上になると、これらのリスクがはっきりと高くなることがわかっています。
「ただのいびき」や「年のせい」「疲れているだけ」と放置せず、きちんと評価することが、将来の大きな病気を防ぐために大切です。
腎臓の病気がある方や、透析を受けている方にとっても、睡眠の質はとても重要です。酸素が足りない状態が続くと、体全体の負担が増し、血圧や心臓への影響も大きくなります。早めに気づいて対応することで、日常生活の質を守りやすくなります。高血圧専門医としても、血圧管理をしっかり行うためには、睡眠時無呼吸の有無を確認することが欠かせないと考えています。
運転業務に就いている方、ドライバーを抱える会社の方へ
この病気は、職業ドライバーの方にとっても特に重要です。
国土交通省の「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」では、睡眠時無呼吸症候群などの主要疾病に関するスクリーニング検査が推奨されています。全日本トラック協会なども「大切なドライバーにSASスクリーニング検査を」と呼びかけ、3年に一度程度の検査を目安に実施するよう勧めています。雇い入れ時や体重が急に増えた場合なども検査を検討するよう促されています。
日中の強い眠気がなくても中等症以上の睡眠時無呼吸がある方は少なくなく、未治療のままでは交通事故のリスクが高まることが指摘されています。多くの運送事業者やバス・タクシー会社では、従業員の安全と健康を守るために簡易検査を取り入れています。
運転業務に就いている方ご本人はもちろん、従業員の健康管理を担う会社の担当者の方にも、ぜひ知っておいていただきたい内容です。
当院での検査の流れ
まずはお話を丁寧に伺い、必要に応じて検査をご案内します。
- 簡易モニター検査
ご自宅で行えるスクリーニング検査です。検査機器がご自宅に届き、普段どおりの環境でセンサーをつけて眠るだけで検査できます。入院の必要がなく、仕事を休まずに受けやすいのが特徴です。指や鼻にセンサーを装着して睡眠中の呼吸の状態や酸素の変化を調べ、結果をもとに次のステップを判断します。
重症度は、1時間あたりの無呼吸や低呼吸の回数(AHI)で判断します。
5回以上15回未満が軽症、15回以上30回未満が中等症、30回以上が重症とされます。
CPAP治療を保険で始めるためには、一定の基準があります。検査結果を見ながら、一人ひとりに合った方法を一緒に考えます。
検査を受けることに抵抗がある方もいらっしゃると思いますが、「まずは簡易検査から」という進め方も可能です。機器が自宅に届くので、比較的気軽に始められます。ご自身の状況に合わせてご提案しますので、遠慮なくご相談ください。
治療について
治療の目的は、日中の眠気を改善して生活の質を上げることと、将来の心血管疾患を予防することです。
「機械をつける」というイメージが強く抵抗を感じる方も多いですが、実際に使ってみると「これがないと眠れない」とおっしゃる方がほとんどです。
中等症以上の閉塞性の場合、標準的な治療は持続気道陽圧療法(CPAP)です。
鼻マスクから空気を優しく送り、気道を広げて無呼吸を防ぎます。正しく使えば、無呼吸をかなり減らせます。日中の眠気が改善し、血圧が下がりやすくなる方も多いです。1晩あたり4時間以上の使用が目安とされています。最初は違和感や鼻の乾燥を感じる方もいらっしゃいますが、加湿機能を使ったり、マスクの種類を調整したりすることで、多くの方が慣れていかれます。
軽症から中等症や、CPAPが合わない場合は、口腔内装置(マウスピース型)を検討します。下あごを少し前に出すことで気道を広げるものです。歯科と連携して作成します。
すべての方に共通して大切なのは、生活習慣の見直しです。
体重が減ると無呼吸が改善しやすいので、減量のご相談もします。就寝前のアルコールを控えること、横向きで寝ること、禁煙なども有効です。睡眠のリズムを整えることも大切です。
中枢性の場合は、まず心不全などの原疾患の治療をしっかり行い、必要に応じてCPAPや酸素療法などを検討します。原疾患の治療を優先しつつ、残った症状に対して対応していくイメージです。
治療は「一度始めたら終わり」ではなく、使いながら調整していくものです。使いにくい点や不安な点があれば、その都度一緒に考えていきます。高血圧の治療と並行して行うことで、血圧管理が安定しやすくなる方も多くいらっしゃいます。
治療を受けない場合に考えられること
治療をせずに放置すると、動脈硬化が進みやすく、血圧が上がり、心血管の病気のリスクが高まります。日中の眠気や集中力の低下も続き、日常生活や仕事に支障が出やすくなります。運転免許の更新や、危険を伴う仕事に影響が出る場合もあります。
特に中等症以上の方では、「様子を見ましょう」ではなく、積極的に治療を検討する価値が高いと考えています。早期に対応することで、将来の大きな負担を減らせる可能性が高まります。高血圧専門医としても、血圧を安定させるためには、この病気を見逃さないことがとても重要だと考えています。
当院で大切にしていること
当院は腎臓内科・透析を中心としたクリニックですが、私自身が日本高血圧学会専門医でもあることから、高血圧と関連の深い睡眠時無呼吸についても丁寧に対応しています。患者さん一人ひとりの事情や環境を伺いながら、今できることを一緒に考えることを大切にしています。
「機械をつけるのは抵抗がある」「自分はそこまでひどくないと思う」「忙しくて検査や治療に時間を取れない」——そう感じる方でも、まずはお話を聞かせてください。検査が必要かどうかも含めて、わかりやすくご説明します。
病院は誰しもが行きたい場所ではないと思います。
健康診断で指摘されても忙しくて後回しにしてしまう、家族に心配されているけれどなかなか受診する気になれない——そんな方もいらっしゃるでしょう。
しかし、その間に病気は確実に進行します。睡眠時無呼吸も、初期のうちに気づいて対応することで、将来の負担を大きく減らせる可能性があります。
「もっと早く受診をしてくれていたら」と思う場面を、これまで何度も経験してきました。
だからこそ、気になる症状がある方、ご家族から指摘を受けた方、高血圧や糖尿病などの治療中の方、運転業務に就いている方やその従業員を抱える会社の方は、どうぞお気軽にご相談ください。
診察室でお待ちしております。
名古屋プログレス腎臓内科・透析丸の内駅前クリニック
院長 小野 亘
