コレステロール・中性脂肪が高いと言われたら
コレステロール・中性脂肪が高い!脂質異常症!と一度でも言われたころのある方、一度立ち止まってお思い出してみてください!
こんなことありませんか?
Case1;
『コレステロールが高いから内科受診するようにいわれたけど、仕事も家庭も忙しいし、今特に症状があるわけでもないし、来年になってればもしかしたら良くなってるかもしれないし、なんとかなるんじゃないかな?油ものきをつけよう!』
一年後、『あれ?また高いな。忙しくて食事はコンビニがどうしても多くて、去年高いといわれた時に油ものを気を付けようとあれだけ誓ったはずなのに、この一年全然できなかったな。内科受診も忙しいし、行く時間ないな。まぁこの一年ほっておいても症状全くないし、落ち着いたらにしよう。来年こそは自然によくなってるんじゃない?』
Case2;
若い時から健康診断でコレステロールが高いといわれるけど、若いのにコレステロールが高いなんてありえるの?これって治療しなきゃいけないの?若い人がコレステロールの薬飲んでるのなんて聞いたことない!運動だってしっかりしてるし、なんで高いの?何かの間違いではないかな?お父さんもおじいちゃんも確かコレステロールの薬飲んでるけど、さすがに若い自分が飲むことははないんじゃないかな?確かおじいちゃんは若い時に心筋梗塞になったって言ってたな。若いし運動していれば良くなるんじゃない?そんなに太ってもないし。でも毎年高いっていわれるんだよな。。よくわからないけど症状全くないし様子見よう。
Case3;
50代女性。『若い頃、コレステロールが高いなんで言われたことなかったのに、なんだか最近高いって言われるのよね。油ものなんて食べてないし、お野菜中心の食事をしてるから、そのうち下がるんじゃない?できれば薬は飲みたくないし、若いころは高いなんてことはなかったわけだから、今ちょっと高いのが続いているのくらい、きっと大丈夫よ。孫の面倒もあるし、習い事もあるしやりたいこといっぱいあって、病院になんて行く時間はないわ。今まで何にも病気なんてしたことなくて元気だったんだから大丈夫よ。』
Case4;
30代女性。最近無気力で、疲れやすくなって、むくみやすいな。寒がりって言われるし、便秘になりやすい。ここ最近の健康診断でコレステロールが高いって言われるのよね。疲れやすいし、行く気力もなかなかわかないし、今は受診はできないや。
いかがでしたでしょうか。これらのエピソードに当てはまるものがありますでしょうか。
この様なエピソードのある方、是非内科を一度受診をするようにしてください!
なぜ受診をした方がいいのかを今から説明していきますので、上記のエピソードに当てはまる方、是非最後まで読んでいただけると受診の必要性を感じ取っていただけるのではないかと思います。
そもそも脂質異常症ってどういう状態のことなのでしょうか?
『脂質異常症』とは、血液中のコレステロールや中性脂肪といった脂質の濃度が異常値を示す病気のことです。
コレステロールって何?中性脂肪って何?
コレステロールは細胞膜を構成する重要な成分で、ホルモンや胆汁酸の材料にもなっています。コレステロールの中には有名なところではLDLコレステロールとHDLコレステロールが存在し(それ以外のコレステロールもありますが、詳細はnon-HDLの説明の記事をご参照ください。)、役割が異なります。
中性脂肪は体にとって重要なエネルギー源で体温を一定に保つ働きもあります。
コレステロールも中性脂肪も体にとってなくてはならない役割を持ったものなのですが、どちらも増えすぎると動脈硬化のリスクもなり、動脈硬化の末、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気に繋がって行くのです。
放っておくと静かに、着実に動脈硬化が進んでいきます。
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と善玉コレステロール(HDLコレステロール)って?コレステロールが高いって?
コレステロールにはLDLコレステロールとHDLコレステロールが有名だと思います。LDLコレステロールが増えすぎると、動脈硬化を引き起こす為、悪玉コレステロールと呼ばれています。
HDLコレステロールは余分なコレステロールを回収するので善玉コレステロールと呼ばれています。なので、LDLコレステロールや中性脂肪やnon-HDLコレステロールは高いことが問題なのに対して、HDLコレステロールに関しては低HDLコレステロールが問題なのです。
non-HDLコレステロールについては別の項で説明していますので、そちらをご参照いただけますと幸いです。
non-HDL(ノンHDLコレステロール)って?
健康診断でnon-HLDコレステロールの欄を見たことがございますでしょうか。
まずはnon-HDLコレステロールの概念として以下の計算式が表すように、「善玉コレステロール以外のコレステロール」という意味なのです。
non-HDLコレステロール=総コレステロール(TC)-HDLコレステロール(善玉コレステロール)
コレステロールって善玉(HLDコレステロール)と悪玉(LDLコレステロール)だけじゃないの?と思いますよね。実はコレステロールはこの2つだけではなく、他にもレムナントと呼ばれるものもあるのです。
そのため、non-HDLコレステロールはこれらのLDLコレステロールやレムナントを含めた指標になります。
このnon-HDLですが、動脈硬化性疾患の発症予測のが優れているということが言われていて、心筋梗塞の発症とも関連し、LDLコレステロールと比べて心筋梗塞発症予測能は同程度であったとされています。
(Low-density lopoprotein cholesterol and non-high-density lipoprotein cholesterol ande the incidence of cardiovascular disease in urban japanese cohort study.(Low-density lipoprotein cholesterol and non-high-density lipoprotein cholesterol and the incidence of cardiovascular disease in an urban Japanese cohort study: The Suita study - Atherosclerosis (atherosclerosis-journal.com))
)。
『脂質異常症』ってどうやって診断するの?
脂質異常症は動脈硬化性疾患リスクとなる高LDLコレステロール血症(LDL(悪玉)コレステロールが高い状態),高non-HDLコレステロール血症(HDL(善玉)コレステロール以外のコレステロールが高い場合),高トリグリセライド血症(中性脂肪が高い状態),低HDL-C血症(HDL(善玉)コレステロールが低い状態)を含む概念です。
以下に診断基準を掲載します。LDLコレステロールやnon-HDLコレステロールや中性脂肪は高いことが問題であるのに対して、HDLコレステロール(善玉コレステロール)は低いことが問題ということが違いがあります。
| LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
|---|---|---|
| 120~139mg/dL | 境界域高LDLコレステロール血症** | |
| HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
| トリグリセライド | 150mg/dL以上(空腹時採血*) | 高トリグリセライド血症 |
| 175mg/dL以上(随時採血*) | ||
| Non-HDLコレステロール | 170mg/dL以上 | 高non-HDLコレステロール血症 |
| 150~169mg/dL | 境界域高non-HDLコレステロール血症** |
*基本的に10時間以上の絶食を「空腹時」とする。ただし水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可とする。空腹時であることが確認できない場合を「随時」とする。
**スクリーニングで境界域高LDL-C血症、境界域高non-HDL-C血症を示した場合は、高リスク病態がないか検討し、治療の必要性を考慮する。
●LDL-CはFriedewald式(TC-HDL-C-TG/5)(ただし空腹時採血の場合のみ)。または直接法で求める。
●TGが400mg/dL以上や随時採血の場合はnon-HDL-C(TC-HDL-C)かLDL-C直接法を使用する。ただしスクリーニングでnon-HDL-Cを用いる時は、高TG血症を伴わない場合はLDL-Cとの差が+30mg/dLより小さくなる可能性を念頭においてリスクを評価する。
●TGの基準値は空腹時採血と随時採血により異なる。
●HDL-Cは単独では薬物介入の対象とはならない。
(参考文献;日本動脈硬化学会;動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版)
症状ってあるの?
脂質異常症は基本的に症状が現れないことが多いです。ただ脂質異常症が長きにわたり未治療であると、動脈硬化性疾患(狭心症や脳血管障害や大動脈疾患)によると考えられる症状、例えば胸痛・手足の動かしづらさや感覚の異常、間欠性跛行とよばれる『ある一定以上歩くと足が痛くなったりしびれたりして歩けなくるけど、休憩すると歩けるようになる』といった症状が出ることがあります。
ただ、このような症状が出ているということは、かなり動脈硬化が進行していることを示唆する為、早急な対応が必要です。場合によっては命に関わります。
こうなる前に治療が必要なのです!!
外見でわかることあるの?(身体所見はあるの?)
脂質異常症の中でも、成人家族性高コレステロール血症(FH)と呼ばれる型の60~70%は特異的なアキレス腱黄色腫を有するとされています。
他にも角膜輪といった眼の所見が現れることがあります。
(参考文献;今日の診断指針第8版)
ほっといたらどうなるの?
脂質異常症を放っておいたら、動脈硬化が進行し、脳梗塞・脳出血などの脳血管障害、
狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患や慢性腎臓病、閉塞性動脈硬化症などを引き起こす可能性があります。日本人の死因の多くを占める心臓病、脳血管疾患は両者とも動脈硬化が大変関係しています。また中性脂肪が高い状態は『急性膵炎』を引き起こすことがあります。
ここで重要なのが、脂質異常症は症状がほとんどないのに動脈硬化を着実に悪化させ、気づいたころには心筋梗塞や脳梗塞、脳出血、慢性腎臓病や大動脈疾患・急性膵炎になっており命を落としかねないといった病気なのです!!これがとても厄介なんです!
どれくらいの人が治療してるの?
厚生労働省「平成29(2017)年患者調査の概況」によると,脂質異常症の総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は、220万5,000人でした。
性別では、男性63万9,000人、女性156万5,000人で、女性は男性の2.4倍も多い結果となりました。なので、脂質異常症で治療をすることは決して珍しいことではないのです!貴方だけではないです。
他の病気がみつかることも!
先程Case1~4を例に上げましたが、Case4は甲状腺機能低下症に伴う続発性脂質異常症を疑います。コレステロールが高いことからこれらの病気が見つかることもあります。
また他にもネフローゼ症候群、クッシング症候群、褐色細胞腫、閉塞性黄疸、原発性胆汁性肝硬変、薬剤(利尿薬,β遮断薬,コルチコステロイド,経口避妊薬,シクロスポリンなど)、肥満、糖尿病などによる脂質異常症もあります。これらの疾患や病態、原因が見つかることもあります。
遺伝することもあるの?
家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)など遺伝素因による脂質異常症はプライマリ・ケアでも珍しくありません。
「家族性高コレステロール血症」は、生まれつき血液中の悪玉コレステロールである、LDL(Low density lipoprotein)コレステロールが異常に増えてしまう病気です。
この「家族性高コレステロール血症」一般人の300人に1人程度と非常に高頻度であり、とても頻度の多い疾患です。
成人(15歳以上)診断基準は
①高LDLコレステロール血症(未治療の時のLDLコレステロール180㎎/dL)
②腱黄色腫(手背・肘・膝等またはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫
③家族性高コレステロール血症あるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第一近親者)
以上の項目の2項目以上を満たす場合は診断となります。
2個項目以上満たさない場合でもLDLコレステロールが250㎎/dL以上の場合、あるいは②または③を満たしLDLコレステロールが160㎎/dL以上の場合は家族性高コレステロール血症が強く疑われます。
家族で脂質異常症の治療をされている人がいる方で健康診断で指摘のある方は是非、受診を検討してください!特にご家族で若い時期に心筋梗塞などの冠動脈疾患を発症した方がいらしたら、健診結果を注意して見てみてください。
じゃあ受診したら何するの?
まずは病歴・家族歴をお伺いします。
問診
❶長期にわたるほど動脈硬化リスクは高くなるので、何歳から指摘されたのか確認致します。
❷動脈硬化性疾患によると考えられる自覚症状があるかお伺いします。
❸家族で脂質異常症の指摘のある方がいるか、また動脈硬化性疾患の指摘をされた方がいるかを伺います。
④喫煙の有無についてうかがいます。
身体診察;
脂質異常症伴う身体所見がないかどうかをチェックしていきます。
採血;
実際にコレステロールがどの程度高いのか、他に合併している病気が隠れていないかチェックを行います。
レントゲン;家族性高コレステロール血症の場合、アキレス腱の肥厚がみられることがあり、そのチェックにレントゲンを撮像するか検討します。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版によるとレントゲンでのアキレス腱が男性は8mm以上、女性は7.5mm以上でアキレス腱の肥厚と診断します。
ABI(足関節上腕血圧比:Ankle Branchial Index)
両腕と両足の血圧の比をみることで、足の血管が狭くなっていないかのチェックを行います。脂質異常症を含む生活習慣病により動脈硬化が進展すると足の血管が狭くなることにより足に十分な血液が行き届かないことがあります。その可能性がないかどうかについて患者さんの背景疾患や身体所見に応じて検査を検討します。
頸動脈超音波検査
動脈硬度の評価項目として動脈の内中膜肥厚(Intima-media thickness;IMT)、プラークの厚み(1.1mm以上の限局性隆起性病変)およびプラーク性状や狭窄の度合いを評価することが推奨されています。
※プラーク;動脈硬化巣に存在する内膜の斑状肥厚性病変
治療はどうするの?
・LDLコレステロールが高い場合
まず続発性高LDL-C血症(他の病気による脂質異常症)では、原疾患の治療をします。
また食事、運動療法、禁煙、肥満の解消を行ったうえで、それでも改善がみられない場合,薬物療法(内服治療)を行います。薬物治療はスタチンという種類の薬が高LDL-C血症治療の第1選択となります。
LDL-C管理目標設定のためのリスク評価フローチャートに従って管理目標を設定します。
日本動脈硬化学会がアプリを出しているようです。
興味のある方は是非みてみてください(動脈硬化性疾患発症予測ツール(医師・医療従事者向け)【日本動脈硬化学会】 (j-athero.org))。
1次予防※の高リスク群は120mg/dL(糖尿病においてPAD(足の血管が狭くなる病気や細小血管症(網膜症・腎症・神経障害)の合併時、または喫煙ありの場合は100㎎/gL未満を考慮する)),中リスク群は140 mg/dL,低リスク群は160mg/dL未満を目標に治療します。
2次予防※のLDL-Cの管理目標は100mg/dLです。
しかし冠動脈疾患またはアテローム血栓症脳梗塞(明らかなアテロームを伴うその他の脳梗塞を含む)既往をお持ちの方の二次予防の管理目標100mg/dLです。
※一次予防;動脈硬化性疾患が今まで起きていない方が発症しないように予防すること
※二次予防;残念ながら動脈硬化性疾患をすでにお持ちの方が、さらなる動脈硬化性疾患発症を予防すること
脂質異常症を改善するのみならず、禁煙、血糖の管理、血圧の管理なども含めた動脈硬化リスク因子を包括的に治療することが重要です。
最後に
お忙しい中、読んでいただき本当にありがとうございました
最初から最後まで読み終えた方にとって少しでも読んでよかったなと思っていただけたら嬉しいです。
お伝えしたいことは、脂質異常症自体はほぼ症状もありませんが動脈硬化を着実に進行させ、命に関わる病気につながるということなのです。
もし健康診断で指摘された方、この記事を読んで受診してもいいかなと思えた方、クリニックにどうぞお越しください。お待ちしています。
自分の為に、大切な人のために、是非一歩踏み出していただけたらと思います。
読んでいただきありがとうございました。
診察室でお待ちします。
院長 小野亘
